若狭の山と峠 21 箱ヶ岳

  国道27号線を敦賀方面に向かって走ると、JR上中駅に近づく頃に、右手(南側)に屏風のように立つ山が「千石山」、左手(北側)にほぼ三角形の形をして、独立峯のように立っているのが「箱ヶ岳」である。箱ヶ岳の登山口は、上中町の堤区にあるが、そこから見上げると、スロープを持たない箱ヶ岳は喬木に覆われていても、急斜面を感じさせる。この山頂は700年頃、箱明神(波古神社)の降臨のあった地とされ、その昔元宮があった。山麓には波古神社が建立されている。1196年頃、源頼朝が島津右衛門次郎忠季を送り込み、ここに堤城を築き、その後内藤五郎左衛門(佐波の守国高)が箱ヶ岳城を築いたため、今もその堀跡などを残している。昭和8年頃までは波古神社の御神燈を分かち、堤区民による山頂での「雨乞い」の祈願が行われた歴史がある。山城としては若狭地方最高所と言われるだけあって、山頂からは小浜市街を眼下に、青葉山、遠くは舞鶴湾、丹後の山並みまで展望できる。

 山頂に至るルートは二つある。一つは、桂雲寺マンサクの道コースで、堤区から登るもの。他の一つは、不動尊滝山コース(両方とも仮名)で、堤区の先の不動の滝から登るものである。桂雲寺マンサクの道コースは、道もわかりやすく、小中学生や家族連れでも安心して登れるコースである。一方、不動尊滝山コースは、途中道の整備されていない所があり、ある程度山登りの経験のある人が、下りではなく登りのコースとして利用してほしい。なお、両コースの中間は、大きな岩場となっており、ルートを間違うと危険である。


コース紹介

①堤区から箱ヶ岳へ     ■対象:家族向けハイキングコース

 小浜方面から国道27号線を敦賀方面に向かい、JR上中駅のひとつ手前の信号を左折し、JRの踏切を渡る。それを直進するとJAのカントリーエレベーターの建物があり、その陰から山麓に堤区を抱いた箱ヶ岳が大きく目に入る。北川橋を渡ると交差点があるが、その左斜めの、集落へ向かう道を選び直進する。集落に入ると、古道と合流する。そこを右折して150m走ると、右側に広場と消防車格納庫がある。車はそこに止めさせてもらうと良い。20台位は置ける。また、そこから集落内を通って、桂雲寺方面に向かうと、途中に区の大きな駐車場があり、そこに止めさせてもらうことも出来る。なお、JR上中駅から歩くと、ここまで約30分の道のりである。

 広場からは、広場のすぐ前にある山方向に向かう区道を登る。5分程で桂雲寺前に着く。観音堂の右を通る林道に進み、200m程の地点に「箱ヶ岳マンサクの道」と標記した小さな標識がある。小川に架けられた橋を右に渡ると、林道から離れると小さな竹藪に入る。その斜面に付いている道を進む。この辺りは、イノシシが荒らすのか、道がやや分かり難い。トラバース気味に、右に進む。やがて杉の人工林を過ぎると、尾根に出て、視界が開ける。ここからは喬木の中、しっかりとした道が山頂まで続く。。早春には道の両側に山頂までマンサクの花が咲き、ヒュウガミズキが咲き並ぶ。希にみるマンサクの群生である。

 途中、城郭跡や空掘跡など、昔の城跡を示す場所を通過する。50分ばかりで広場に着くが、ここも「城郭」の標識がある。山頂へはここからやや右折して10分弱で到着するが、この広場で見る、残雪の三十三間山、武奈ヶ嶽を背景にするマンサクの花は美しい。広葉樹をくぐる山頂への道はやや下向し、すぐに急登となる。登り詰めるとそこは城跡山頂だが、404.4m地点は右折して北へ広葉樹と若い檜林の間を50mばかり進んだ所にある。山頂には二等三角点がある。(2014.5.2踏査)

 

■コースタイム

 駐車広場→5分(5分)→桂雲寺前登山口→5分(5分)→登山道入り口→50分(30分)→広場(城郭跡)→10分(5分)→山頂

 (  )内は逆コースのコースタイム

 

②不動の滝から箱ヶ岳へ      ■対象:中級コース

 桂雲寺マンサクの道登山口の広場前を直進し、杉山区へ向かう。350m程行くと波古神社の横を通り、なお500m程行くと、左側に「景勝不動の滝」の案内板が立っている。そこにある舗装された林道が登山口になる。

 杉の人工林の中を進むと、10分程で、橋があり、沢の左岸に渡る。ここで林道は終わり、山道となる。左手に、岩壁が見え、やがて不動の滝に着くが、ここまで登山口から15分程である。左手に垂直に落ちる雄滝、右手にやや緩やかに落ちる雌滝があるが、いずれも水量は少ない。

 ここから登山道は滝の右手に付けられたロープを頼りに、急斜面を登る。道は左方面に進み、小さな沢を渡る。ここの少し上の尾根上に不動尊があり、5分足らずで着く。なお、不動尊の祠前に登らずに、沢沿いに直進すると、岩場に出て危険である。注意してほしい。

 不動尊より上は道らしい道はなく、もっくりした背を好きなように上へ登る。この辺りからは、自然林となり、気持ちが良い。最初はかなりの急登であるが、10分程で傾斜はやや緩くなる。倒木の多い道をさらに15分程歩くと、再び道は急となり、しばらくで大きな岩に出会う。不動尊からここまで40分程である。

 その岩を左に避けて左に廻りように進む。この辺りで、ルートがはっきりしなくなる。正面には、明るい稜線が見え、そのまま稜線に向かって登ることも出来るが、傾斜が急なので、右手に進み、岩の上の稜線に戻った方がよい。赤テープは、この方向に付けられている。稜線に戻り、しばらく登ると、箱ヶ岳の北側に延びる主稜線にでる。数個の大きな砦跡である岩があり、そこは山頂地点より北へ150mの地点となる。ここには、不動尊への分岐の標識が付けられている。なお、不動尊からここまで40分程かかる。

 山頂へ出るには、南方向(稜線に出て左方向)へ向かう。山頂までに3つの外堀を越えるが、山頂一帯がかっての城跡である。稜線の砦跡からは、10分程で山頂に着く。東方向には、三十三間山や三重ヶ嶽から湖北武奈ヶ嶽への稜線が綺麗に見える。(2014.5.2踏査)

 

■コースタイム

 駐車広場→5分(5分)→波古神社→10分(10分)→不動滝山登山口(滝案内板)→15分(15分)→雄滝雌滝→5分(5分)→不動尊→40分(30分)→稜線砦跡→10分(10分)→山頂

 (  )内は逆コースのコースタイム

 

地図