若狭の山と峠 15 後瀬山

 後瀬山は、旧小浜市街の西側に接して、屏風を立てたような形で、伏原地区から湯岡地区にかけて、名刹発心寺を抱えるように半円を描いて横たわっている。標高わずか224mで、山というより丘といった方が適当かもしれない。ただし、歴史的には有名な山で、万葉集にも出てくる。また、途中には昔若狭の領主武田家五代元光が城を築いて居城とした所があり、現在その城跡の建物はないが、石垣の一部が残っている。後年、ここには愛宕神社が祀られている。
 山登りの対象としての価値はそれほどないが、途中には気持ちの良い林もあり、ちょっとしたハイキングコースとして紹介したい。本書では、伏原の愛宕神社の鳥居の所から登り、湯岡の貯水タンクへの縦走を紹介する。途中、道が分岐する所が多くあるので、注意が必要である。また、青井の神明神社から後瀬山に登るコースや、神明神社から、小浜公園へのハイキングコースも併せて紹介する。


コース紹介

①愛宕神社から湯岡への縦走  ■対象:初級コース
 JR小浜駅の裏を走る国道27号線を本郷方面に向かい、後瀬山トンネル手前の信号を右折する。すぐ左手に「霊松山発心寺」と書かれた大きな石柱があり、ここを左に入るとすぐ右手に立派な石の鳥居がある。愛宕神社の鳥居で、ここが登山口となる。鳥居の手前左手に駐車スペースがある。発心寺へは、この道を国道の下を通っていく。なお、JR小浜駅からここまで徒歩で約10分である。
 鳥居をくぐり登り出すと、崩れかけた古い石段となり、その先はジグザグの急登となる。雑木林の中、苔むした岩肌の上の道を登って行く。木に覆われて展望はない。5分程で、ハッキリとした尾根の上に出るが、この辺りが、ちょうど後瀬山トンネルの真上になる。さらに5分程登ると広場があり、休憩場所になっている。以前は、格好の見晴らし台であったが、今は木々に覆われて展望はきかない。さらに登ると、石垣が現れ、武田家城趾に着く。広い平坦地には、愛宕神社が祀られており、周囲は椎などの大木が取り囲んでいる。登山口からここまで約25分であり、休憩するにはちょうど良い。
 この先道は社殿の左側を通って下って行くが、30m程下った所で、道は右に回り込んで行く。そのまま下って行く道もあるので、そこへ入らないように注意する。この辺りは木や草が道に被さっていて、少しうるさい。やがて登りとなり、右手に小浜湾が良く見えるようになる。愛宕神社から15分で小ピークに着く。ここで道は二つに分かれるが、ここには石の標識があり、右方向は小浜史跡と書かれている。
 後瀬山へは、左方向(南)へ進む。雑木林の中、道はしっかりしており、気持ちの良い尾根道である。すぐに右に下る道を分けるが、そのまま直進する。木のトンネルの中、小さな上り下りを繰り返し、さらに進むと、道は左へ少し下る。右に回り込み、尾根に並行に進むようになると、前方右手に関西電力の無線中継所の鉄塔が見える。ここまで先ほどの分岐から約20分である。
 鉄塔を過ぎた辺りから、左手に市街地が良く見える。右に行く道を分け、さらに進むと鉄塔から5分足らずで後瀬山山頂に着く。尾根の横に三角点があるだけで、頂上らしくない。
 山頂からは緩やかな下りとなり、左手には杉の植林が出てくる。木は小さいので、市街地が手に取るように良く見える。山頂から5分程で、道は二つに分かれるが、ここは左下方向に進む。さらに5分程で道は急な下りとなるが、その手前で左に入る道がある。ここを左に行く必要があるが、入り口が少し分かり難いので、注意して探してほしい。ここが一番間違いやすい所である。
 左へ入ると、道ははっきりしており、尾根の右を巻くように下って行く。しばらくすると尾根に戻り、上り下りしながら下って行く。この辺りも道はしっかりしており迷うような所はない。やがて、道は右方向に下り始めるが、すぐに貯水タンクの頭が見える。急な斜面を下りると、貯水タンクの横に出る。頂上からここまで約45分である。
 ここからは、広い道を下り、水源地管理事務所の横を通り南川の堤防の道に向かう。途中、左の村の中への道を行けば、旧国道に出て、西に向かう。国道27号線と交差し、国道を横断すれば左手が登山口である。貯水タンクから約40分である。
 このコースは道が分岐する所が何ヶ所かあるので、自分の進む方向を良く見定めて進む必要がある。特に、山頂からの下りの途中で、左へ入る所は要注意である。
■コースタイム
 登山口→25分(15分)→武田城趾→35分(30分)→電波中継所→5分(5分)→後瀬山→10分(10分)→湯岡への分岐→35分(50分)→貯水タンク→40分(45分)→登山口
 (  )内は逆コースのコースタイム

 

②神明神社から後瀬山へ    ■対象:初級コース
 国道27号線を高浜方面に向かい、後瀬山トンネルを抜け、最初の信号のひとつ手前の道を左折する。この道は谷田部方面に向かう旧道で、すぐに信号からの道と合流することになる。左折するとすぐ左手に「神明神社、八百姫神社」の看板と後瀬山の案内図がある。この神社はツバキで有名で、早春の頃には境内一帯にツバキの花が広がっている。神社に入り登って行くと、本殿手前右手に「後瀬山遊歩道入り口」の標識が立っている。標識に従って登って行くと、「左手50mに白椿」の案内標識が立っている。この辺りからいよいよ登山道となるが、この先には昔奥の院などが建っていたと思われる平坦なところが何箇所かある。道は広く、良く整備されているので迷うことはない。雑木林の中、時々急坂が現れる尾根道を登って行く。周囲の展望はあまり良くないが、ちょっとしたハイキングには気持ちの良い道である。登山口から約35分でちょっとした平地のある小ピークに着く。小ピーク手前で左手に小浜湾と小浜市街が眺められる。
 小ピークからは、右手に進めば後瀬山を経て湯岡へ、左手に行けば愛宕神社(武田城址)を経て小浜市大宮の愛宕神社鳥居(後瀬山トンネル入り口付近)に着く。なお、湯岡方面に向かう場合分岐がいくつかあるので注意が必要である。
■コースタイム
 神明神社→35分(25分)→小ピーク→25分(20分)→後瀬山              
 (  )内は逆コースのコースタイム
 
③神明神社から小浜公園へ    ■対象:初級コース
 後瀬山の範囲を外れるが、愛宕神社や湯岡から登り、青井に下山した後、元気が残っていた場合にたどるコースとして紹介する。このコースは最初車道を進むが、途中から「市民の森あおい」として整備された気持ちよい道があるので、後瀬山とは切り離して、ちょっとしたハイキングコースとして単独で利用するのもよいだろう。
 神明神社を出て、左(谷田部)方面に向かう。二つ目の角を右に曲がり、県道を渡る。浜見団地を左に見ながら、車道を若狭霊場に向かう。若狭霊場、旧のゴミ焼却場を過ぎ、小浜湾の眺めが目に飛び込んできた所で、右手の道に入る。すぐに右手に通行止めになっている舗装された林道があるので、そこへ入る。しばらくすると左手に自然観察ゾーンの看板があり、この辺りからの小浜湾や久須夜ヶ岳の眺めはすばらしい。また、右手には大島半島や青葉山などが良く見える。林道を登りきった辺りで、右手の舗装された遊歩道に入る。この辺りからもすばらしい眺めが得られる。やがて道は下りとなるが、この辺りから正面に多田ヶ岳のすばらしい姿が見える。
 やがて道は車道の終点を通過し、今度は舗装されていない遊歩道に入る。気持ちのよい道をしばらく進むと、左手に展望小屋がある。この先で、道は二つに分かれるが、その先で合流する。やがて道は右へジグザグに下りだし、再び階段を登ると星の広場に着く。なお、この階段の手前に右へ下る道があるが、これは高成寺に下る道である。
 星の広場には、休憩用の小屋や芝生の気持ちのよい場所がある。この広場の先には、展望台もあり、昼食をとるにはとても良い所である。なお、ここまでは小浜公園から車道が上がってきている。ここからは車道を少し下り、慰霊塔の建物を過ぎた辺りで、右の道に入ると佐久間艇長銅像を経てすぐに小浜公園に着く。

■コースタイム
 神明神社→20分→右の道に入る所→25分→車道終点→20分→星の広場→15分→小浜公園
  (逆コースも、概ね同じ時間)

地図