若狭の山と峠 10 三国岳(峠)

 三国と名の付く山は、全国でいくつ位あるのであろうか。本HPでも三山紹介しているが、この三国岳は、若狭、近江、丹波を分けている山である。この山は三国峠と称されることもあるが、この地域では、一部、ピークを峠と呼び、峠を坂と呼ぶ。ここでいう峠と坂は標高差もさほどでなく、若狭と丹波を結ぶ道にふさわしい言い方なのかもしれない。

 この三国岳周辺には、それぞれの国に越える峠や坂が多くあり、木地師がよく使っていたといわれている。三国岳の西側には、野田畑峠が、また、東側にはクチクボ峠がある。両方の峠とも根来坂や知井坂のように当時の街道といった大きなものではなく、村と村をつなぐ小規模な峠道の一つであったと考えられる。

 三国岳への登山ルートとしては、以下のルートが考えられる。

①挙原集落(跡)よりクチクボ峠を経由して、三国岳へ向かうルート

②永谷集落(廃村)より野田畑峠を経由し、県境稜線上を三国岳へ向かうルート

③永谷集落(廃村)より野田畑峠を経由し、一旦長治谷作業小屋へ下り、三国岳へ登り返すルート

 これらの内、①のルートが比較的すっきりしており、お奨めのコースである。ただし、このルートでもある程度の読図力は必要であり、また、林道の状況を事前に調べておく必要がある。

 ②のルートのは、野田畑峠から県境稜線を使うルートで、はっきりとした道はないものの、最近良く歩かれているようなので、踏み跡はしっかりしている。ただし、迷いやすい所もあるので、ルートファインディングのできる複数のメンバーで入山してほしい。また、野田畑峠までの間の道がはっきりしていないので、読図の出来るメンバーで登ってほしい。。

 ③のルートは、京大演習林の散策を楽しむことの出来る良いコースであったが、現在、演習林内は、入山禁止となっている。

 以上のような状況であるので、本書ではメインルートとして、挙原集落(跡)よりクチクボ峠を経由して、三国岳へ至るルート(上記①)及びサブルートとして、野田畑峠から県境稜線沿いに三国岳(峠)至るコース(上記②)を紹介する。なお、③のルートについては、入山禁止になっている現状から、コース案内を削除している。

                            (2020.11.8一部修正) 

 

(注)クチクボ峠の名称は、福井県側で使われており、滋賀県側では、ナベクボ(鍋窪)峠の名称が使われているようである。このHPでは、クチクボ峠の名称を使わさせて頂きます。


コース紹介

①クチクボ峠経由で三国岳(峠)へ  ■対象:中級コース 

 小浜より車で国道162号線を南下し、名田庄村久坂の手前で、左手の橋を渡り、虫鹿野集落へ向かう。虫鹿野集落で右手に虫谷林道を分けるが、永谷方面へ直進する。やがて最後の集落である木谷集落を過ぎ、しばらく行くと、左手に皇子塚方面への矢印のある看板がある。ここは出合と呼ばれる所で、昔は分校(看板より少し手前の左手)のあった所である。ここで舗装されている道と分かれ、左の皇子塚方面へと進む。しばらくすると左手に「皇子塚」と書かれた看板があり、左手上部には昔、挙原という集落があった。現在は、廃村となっているが、ここには履中天皇の皇子の墓と伝えられる皇子塚がある。
 皇子塚からさらに進むと、道はだんだんと荒れてきて、やがて左手に合子谷(ごしゃ)谷林道を分け、鍋窪林道に入る。さらに道は荒れてくるが、合子谷谷林道の分岐から約1kmの所で右に新たな作業道を分ける。この先も林道の状態が良ければさらに車で行くことができ、最も条件が良ければ登山口まで車で入ることができる。ここでは、一応この作業道分岐から歩き始めることにする。なお、この付近には、十分な駐車スペースがある。
 ここから林道歩きを始めると、駐車地点から約20分で平成5年度に建設された堰堤に着く。川沿いの林道をさらに10分弱行くと、次の堰堤があり、そこから林道は谷を外れ右へ向かう。
坂も急となり、林道もさらに荒れてくる。右へ左へと大きく曲がりながら登山口へと向かう。6回目の曲がり角の地点の左に、尾根沿いに登る広い道があり、そこが登山口である。ここには、標識が設置されており、ここまでは、駐車地点から約1時間30分の道のりである。なお、4回目の曲がり角の所で、直進する道もあるが、ここは左へ入る道に進む。
 6回目の曲がり角の所で左の道に入ると、200m程先で太い道は終わり、尾根上の細い道となる。左側は杉の植林、右側は雑木林の間の道を進む。道に木が被さっている所もあるが、道ははっきりしており、また尾根は細いので尾根を外さないように進めば迷うことはない。所々赤いテープも巻いてあり、心強い。やがて左の植林も切れ、雑木林に囲まれた気持ちの良い緩やかな尾根を、677mのピークを目指して登る。
 登山口から約40分で677mピークに着くが、ここには三角点があり、福井県と京都府の県境稜線上である。京都府側が杉の植林で鬱蒼としているのに対し、福井県側はブナなどの広葉樹で覆われていて、とても明るく気持ちが良い。なお、この地点には、標識が設置されているが、下山する時通り過ぎないよう注意すべき地点である。
 677mピークで右折し、県境稜線上を三国岳方面に向かう。左は杉の植林、右は雑木林の間の尾根道を下って行く。一旦鞍部まで下り、ピークを一つ越えるとクチクボ峠に着く。ここには、左から京都府の生杉からの道が上がって来ており、標識もある。右には、福井県側への明瞭な道が続いているが、この道は200m程先ではっきりしなくなる。深くえぐられた峠道の少し上には「○征墓」と書かれた石碑がある。
 峠から先は、ブナ林の中の一直線の登りとなる。左側のうっとおしい杉林も消え、周囲全体が広葉樹の美しい林となる。やがて尾根が細くなり、左手に長池と呼ばれる湿地に出る。湿地の左手上部に見えるのが三国岳であり、湿地を回り込んで20mほど登れば三国岳山頂に着く。なお、山頂手前で、次項で紹介する野田畑峠からの道と合流する。
 こぢんまりとした山頂からは生杉の集落がすぐ近くに見え、周囲の木に遮られ360度の展望とはいかないが、百里ヶ岳などの山々が展望できる。なお、多人数で昼食をとる場合は、先ほどの長池の横の広場辺りが良い。下山の際には、677mピークで左の尾根に入る所を注意してほしい。

■コースタイム
 鍋窪林道途中(作業道分岐)→90分(70分)→登山口→40分(30分)→677mピーク→15分(15分)→クチクボ峠→30分(20分)→三国岳
 (  )内は、逆コースのコースタイム。

 

野田畑峠から県境稜線沿いに三国岳(峠)へ  ■対象:上級コース

 野田畑峠への若狭側の起点は名田庄村の現在は廃村になっている永谷集落である。 

 小浜より名田庄村を経由して永谷集落へ向かうが、途中の出合までは前項①を参考にされたい。出合で「左:皇子塚」の看板をやり過ごし、そのまま直進するとやがて永谷集落に着き、集落を過ぎると道の舗装が切れる。この先林道が2㎞弱続き、林道終点が登山口である。現在、林道は荒れており、車での走行は不可能なので、集落のはずれの空き地(2台程度駐車可)に車を止めて、歩き出す。林道は荒れているが、40分程で林道終点に着く。

 林道終点からいよいよ登山開始である。左側を流れる沢に降りたらすぐに右岸(上流から下流に向かって右側)へ渡る。すぐに左岸へ戻り、踏み跡程度の道を注意深く進む。この後、尾根の取り付き点までは、何回か渡渉しながら沢沿いに進む。まぎらわしい踏み跡につられて、沢から離れないように注意してほしい。林道終点から約30分で尾根への取り付き点(1/25000地図で379mと表示されている地点)に着く。ここは右側から沢が合流する地点で、本流の沢を進みながら右側からの沢の合流に注意しておく必要がある。この沢の合流点のすぐ上に取り付き点があるので、標識に従って取り付き点を見つけてほしい。取付き点辺りには、昔、飯場があったようで、空き瓶が散乱している。

 取り付き点からは、すぐに急な登りとなり、尾根をまっすぐに登っていく。杉林の中で、古道は消失し、以前あった登山道も消えてしまっているので、目印テープを参考に、ひたすら上を目指して登っていく。杉林が多く、あまり楽しい登りではない。上部へ行くと、少し道らしい踏み跡が出てきて、左側に回り込むように登っていく。再び、斜面を直登するようになり、さらに進むと平らな所に出る。この辺りまで来ると、右手前方に峠らしき地形が見える。この先峠までは、わずかな距離であるが、地形が複雑で、注意を要する所である。道はやや右手に回り込むように進むので、目印に付けてあるテープ、標識を参考に峠に向かってほしい。わずかな時間で峠に着く。取り付き点から峠まで約60分である。 

 野田畑峠は、こぢんまりとした峠で、峠の標識がある。この峠の向こう、京都府側は京都大学の演習林で、入山禁止であるが、少し入った所には、由良川の源流が流れている。

 なお、野田畑峠から三国岳(峠)までは、県境稜線N「野田畑峠~三国岳(峠)~クチクボ峠」の項を参照されたい。

                                            (野田畑峠までは、2020.11.08再踏査、一部修正)

■ コースタイム
 永谷集落→40分(40分)→林道終点→45分(40分)→尾根取付点→60分(50分)→野田畑峠→80分(80分)→三国岳
 (  )内は、逆コースのコースタイム。

地図