若狭の山と峠 09 杉尾坂

 小浜湾へ注ぐ主要河川の一つである南川を抱く名田庄谷は、京都への道である。丹波国である山向こうへ越す峠は全て都への道であり、牛馬を追って、また背に荷を付けて越えた交易のルートである。 

 若丹国境の八ヶ峰と、若狭・近江・丹波の境にある三国岳(峠)の間には、五波峠、権蔵坂、杉尾坂、野田畑峠、地蔵峠、三国峠と昔日の往還をしのばせる古径が多くあったが、自動車の普及と共に、旅人は途絶え、村人達の足も山から遠のいた。生い茂ってくる草木と植林で昔の道は、消失してしまった所も多く、この杉尾坂もその例外ではない。 

 京大演習林の入山が規制されているなか、この峠道は、福井・京都の県境稜線に至る貴重なルートであり、何とか歩ける状態で維持されることを期待したい。 

 杉尾坂へは、おおい町名田庄の虫谷集落(廃村)から入るのでこのルートを紹介する。なお、このルートの道は、植林の手入れのための作業道と、その左斜面についている昔の峠道を組み合わせて歩くと良い。ただ、この尾根にもユズリハが生えており、今後ともこの状態で維持されるかどうかは分からない。また、集落跡から杉尾坂取付きまでの林道が荒れており、入山には注意が必要である。(2020.09.28一部修正) 


コース紹介

①虫谷から杉尾坂へ    ■対象:上級コース

 小浜から車で国道162号線を南下し、名田庄・久坂の手前で、左手の橋を渡り虫鹿野集落へ向かう。虫鹿野集落で道は橋を渡るが、その手前の板谷商店(現在、営業していない)の所を右折し、虫谷川側へ入る。 

 虫鹿野より約3㎞で虫谷の集落(廃村)に着く。ここで道の舗装は切れ、さらに1㎞程先で、車は通行出来なくなるので、虫谷集落内の空地にに駐車した方が良い。集落から1km程行くと、道は荒れてきて、林道というより、荒れた登山道のようになる。途中、林道が二叉になっているが、左に行かないように注意してほしい。林道が崩れたため、渡渉を強いられる所が何箇所もある。 

 荒れた林道を1時間程進むと、堰堤が二つ続く所に出る。以前は、2番目の堰堤から沢に入ったが、沢沿いのコースが荒れているので、林道をそのまま進んだ方が良い。堰堤からさらに林道を進むと、500m程先で、林道が大きく右に曲がる地点があり、ここには、標識が付けられている。ここを左手に沢に下るが、斜面が急なので、慎重に下って欲しい。沢に下りた後、本流に向かって沢を少し下り、もう1本沢を渡って、左手の尾根に取り付くと良い。1本手前の尾根に取り付かないように気をつけて欲しい。なお、本流まで下ると、本流との合流地点には、大きなトチノキがあり、尾根の末端で、地図上は、三俣のようになっている地点である。

 ここからは、二つの沢に挟まれた尾根を登るが、登った所には、飯場跡のようなところがあり、目印となる。尾根の右側は植林、左側は自然林である。尾根には、植林の手入れのためと思われる作業道が付いていて、急登であるが、道はわかりやすい。一方、尾根の左手の斜面には、昔の峠道の名残のようなジグザグの道があるので、それを辿るのも楽しい。作業道と峠道を組み合わせて、登っていくと良いが、最初は、左手にトラバースしていくなだらかな道があるので、それを利用すると良い。なお、この尾根の中段付近にユズリハが繁茂してきており、今回の調査時には刈り込んでいるが、いつまで維持されるか、心配である。 

 尾根に取り付いて30分程登ると、尾根はなだらかになる。右が切れていて、右方面の尾根が見え、全体の様子が分かってくる。そこから15分程で、以前は大木が2本立っている所があったが、今は枯れている。 

 さらに5分も進むと、平らな所に出るが、この辺りは左側が急斜面となっている。平らな所を過ぎると、再び道は急になり、急登を5分程続けると、稜線に出る。尾根の取り付きからここまで、1時間強の道のりである。峠は、ここを右に曲がり、50m程行った所であるが、下山時に登って来た尾根を間違えないように、稜線に出た所にテープ等の目印を付けておいた方が良い。なお、昔の峠道は、急登の手前から右の杉林に入り、直接峠に続いていたと思われるが、今は、その痕跡もない。 

 峠に出ると、杉尾峠の看板があり、ここから沢沿いに下って行く道がある。この道は、京大芦生演習林の中の道で、長次郎谷作業小屋を経て、地蔵峠に繋がっている。現在、演習林内は、ガイドツアー以外は、立ち入り禁止となっている。 

 帰りは元来た道を引き返そう。稜線に出た所を、間違いなく左の尾根に入れれば、後は迷う所はない。(2020.09.28最終踏査、一部修正)

■コースタイム
 虫谷集落(廃村)→90分(80分)→三俣(林道からの下降点)→70分(50分)→杉尾峠 

地図