若狭の山と峠 07 棚野坂

 現在は、国道162号線が、おおい町名田庄のほぼ中央を東西に貫通して、京都府に繋がっているが、昔この道が通っていなかった頃、日本海に面する高浜に集められた海の幸は、おおい町から石山坂を通り、名田庄口坂本に来ると、坂尻集落から棚野坂、そして京都府の鶴ヶ岡へと運ばれていた。また海の幸と同様、郵便物を運ぶ交通路として、棚野坂は重要な役割を果たしてきた。奥名田郵便局が口坂本にあるのは、この辺りが当時の交通の要所であったことの反映だろう。

 現在、棚野坂の福井県側から京都府側(堀越トンネル出口)まで、道ははっきりとしており、通り抜けることが出来る。ただ、福井県側の道は、幾筋にも道が付いており、目印テープを拾って歩いた方が、歩き易い。

 福井県側から棚野坂へは、名田庄村の坂尻集落から入ることになるので、このコースを紹介する。また、京都側の道についても、紹介する。(2017.11.28写真入れ替え)


コース紹介

①坂尻から棚野坂へ     ■対象:中級コース

 国道162号線が口坂本集落で、京都方面と大飯・高浜方面に分岐する。棚野坂への登山口である坂尻集落へ入る橋は狭いので、分岐から少し京都側にある国道沿いの空き地に駐車する。

 駐車地点から国道を京都方面に5分程歩き、左手の白い橋を渡る。ここが、登山口の坂尻集落で、民家が一軒ある。家の横は、谷になっており、登山口の標識がある。この谷沿いのしっかり踏み固められた道を行くと、しばらくでシダが生い茂り、道がやや分かり難くなる。目印テープや標識を頼りに慎重に足を進めると、すぐにはっきりとした道になる。登山口から約30分、道が右にトラバースし始めると、道が崩れている地点に着く。その付近にはロープが張られているので、それを頼りに進むと、再びしっかりとした道となる。その先は、古道となり、道は幾筋にも分れる。どの道も峠道なので、いずれ合流するが、歩き易い道に目印テープが付けられているので、それを拾って歩いた方が歩き易い。

 そのような道を30分ほど進むと、その先に山の斜面が大崩壊している地点がある。崩壊地点は、大規模な土留め工事が行われているが、昔の道は寸断されている。崩落地点手前に、右手に登って行くように示す標識とテープがあるので、それに従って、尾根の上に登る。尾根に出てから、尾根道を左手に進み、ピークを越えて下っていくと、標識の設置されている地点に着く。ここは、崩落前の道が合流してくる地点(分岐)で、もし峠から下ってくる場合は、右手の道に入らず、尾根を登っていく必要がある。

 ここからは、綺麗な林の中、気持ちの良い尾根道が続く。やがて再び古道となり、歩き易そうなルートを選びながら進む。さらに、15分ばかり歩くと、前方に堀の深いU字道を目にする。このU字道を通り過ぎた地点から、尾根の右手を15分ばかり歩いて行くと、道は平坦になり、足取りは軽くなる。その平坦な道を、後半は尾根の右や左を交互にとりながら、30分ばかり歩くと、ブナ林帯となる。この辺りは休憩をとるのに気持ちが良い。

 さらに、この辺りから、新しい道は、主に、尾根の左斜面をトラバースするように進む。このような道を、30分歩くと、ヒノキの大木が道の脇で迎えてくれる。そして、その横で六体のお地蔵さんが、登山者をやさしく仰ぎ見ている。なお、ブナ林の辺りから、尾根の上には、ジグザクに進む古道もあるので、そちらを進んでも、六地蔵に出る。

 ここから、尾根の右手を5分程歩くと、電柱があるが、この辺りが、棚野坂の峠であり、標識が設置されている。この電柱から左後方の尾根上に、関西電力の無線中継所が見える。中継所を背中にしながら尾根沿いに約2分、丹波側に入り込んで行く支尾根上に昔の棚野坂の京都側の道が続いている。

 この先、NTT無線中継所に続く道は良く整備され、広くて荷車が通れそうである。坂道を10分ばかり散策すると車道に突き当たり、NTT堀越無線中継所までは、目と鼻の先の距離となる。

 なお、帰りは元来た道を引き返すことにするが、堀越トンネルの京都側出口付近にあらかじめ車を配車できれば、後述の京都側へ下る道を辿ることも出来る。(2021.5.14最終踏査)

■コースタイム
  駐車地点→5分(5分)→登山口→1時間15分(1時間)→大崩落地点の先の分岐→1時間30分(1時間15分)→六地蔵→20分(15分)    →NTT無線中継所

 (  )内は、逆コースのコースタイム

 

②棚野坂から京都側への道     ■対象:中級コース

 若狭の範囲を外れるが、棚野坂の京都側の道を紹介する。

 福井県側から、棚野坂のある稜線に出たら、右折し、堀越峠のNTT無線中継所に向かう。2分位行くと道は右に大きく曲がるが、その手前左手に支尾根が現れる。その尾根の手前側に道があり、ここが京都側への下山点である。

道は最初尾根の左側を巻くように付けられており、踏み跡もしっかりしている。目印のテープ等もあり、迷うことはない。道は、福井県側と変わらないくらいであり、道が幾筋にもないので、すっきりしている。ただ、最近、アセビの繁茂している箇所もあるので、注意してほしい。尾根の入口から30分位で旧国道に出る。旧国道に出て、道の反対側の少し右手を探すと、杉林の中に道があり、再び峠道を歩くことが出来る。

 旧国道の先は、杉林の中で、少し鬱陶しいが、道を見失うことはない。約20分で堀越トンネルの京都側入口の真上に着き、道は右に大きく曲がり、杉林の中、テープを拾っていくと、堀越トンネル出口に出る。(2021.5.14最終踏査)

■コースタイム 
京都側下山点→30分→旧国道(横断)→20分→堀越トンネル・京都側入口

地図