若狭の山と峠 32 野坂岳

 三方を山に囲まれ、一方に海が開ける敦賀は、日本海のほぼ中央に位置し、湾内は自然の良港として古くから栄えてきた。市街地の北東部に鎮座する気比神宮は食物を司る神を祀る社で、特に海人族によって信仰されてきた神であると伝えられている。この社に詣でる時、太古からの海と京畿との関わりを彷彿とさせるものがある。
 敦賀駅から北西に見える山が、敦賀半島の脊梁をなす西方ヶ岳、蠑螺ヶ岳であり、南西に構える堂々たる山が野坂岳である。この山は、一般に粟野の「野坂いこいの森」から登るコースが紹介されている。しかし、その他にも敦賀市の山集落から登るコースや裏野坂から沢道を経て山頂に至るコース(井ノ口川林道コース)もある。
 野坂いこいの森コースや山集落からのコースは、良く整備されており、家族連れのハイキングには、野坂いこいの森コースの往復を、をお奨めする。一方、山集落からの道は、展望はあまり良くないものの、美しい林の中の静かな山歩きを楽しめるし、また、野坂いこいの森からの縦走コースとしても利用できる。なお、井ノ口川林道コースは、ルートファインディングの力を必要とし、場合によっては藪こぎも必要となるので、十分自信のある人以外は入山しないでほしい。本書でも、参考記録の扱いで紹介する。
 また、野坂岳から南の三国山に延びる尾根は、かっては藪で、積雪期のみのコースであったが、近年、一部切り開きもなされ、積雪のない時期でも歩くことが出来るようになった。このコースも一般の登山道ではないので、参考記録として紹介する。


コース紹介

①粟野から野坂岳へ    ■対象:家族向けハイキングコース
 JR小浜線・粟野駅を出て、左方向に進み、すぐに左手にある小浜線のガードをくぐる。ガードをくぐると、道は三叉路になっており、「野坂いこいの森」の看板に従って左方向に進む。しばらくこの道を進むと、左手に少年自然の家の建物があるが、そのままキャンプ場の中の道を進むと一番上の駐車場に着く。駐車場手前の左手に登山口があり、駐車場の奥にはトイレもある。粟野駅から登山口まで約40分の道のりである。なお、車の場合、旧国道27号線のそばにある国立敦賀病院の所もしくは関集落敦賀寄りの関リサイクルセンター入口看板の向かい側から入ると良い。
 登山口には、山頂まで約2時間30分の看板があり、そこから赤松と杉の混在する林の中に遊歩道が続いている。すぐ左手に野鳥の観察小屋があり、その先でテレビ塔への道を左手に分ける。この道はテレビ塔を経由して登る道で、途中で合流する。
 一度沢を渡り、右手に沢音が聞こえるようになると道は細くなり、遊歩道から山道となる。しかし道はしっかりしており、迷う心配はない。登山口から約30分程で小さな沢を渡るが、ここが栃ノ木地蔵である。地蔵菩薩が祀られており、沢の水は敦賀の名水にも選ばれている。ベンチもあり、休息には最適の所である。ここには、山頂まで2.6kmの標識がある。なお、栃ノ木地蔵の標識は、素晴らしい書体で記されており、敦賀の人達のこの山に対する思いが伝わってくる。
 ここからは沢を外れ、ジグザグに登って行く。ひと登りで尾根に出るが、敦賀市街や敦賀湾の展望もきき、尾根上の気持ちの良い所である。左下方向にはテレビ塔からの道がかすかに残っている。ここからは山頂まで2kmである。尾根を右上に登って行くが、何ヶ所か旧道と交差する。やがて行者岩の標識があり、右手に入る道がある。その道を30m程行くと左手にロープが張られた急な道がある。ロープを伝って20m程登ると行者岩の上に立つことができる。眺めの良い所なので是非立ち寄りたい。
 標識の所まで戻り、少し行くと広場のような所に着く。この辺りも展望の良い所である。さらに登って行くと一の岳の標識のある所に着く。一の岳に登って行く道もあるが、そのまま進むと道はトラバース気味になる。やがて緩やかな登りとなり、ニの岳、三の岳と通過する。この辺りはブナ林の美しい所である。
 さらに登って行くと、最後の急登を経て、山頂直下の山小屋に着く。この山小屋は平成元年に建てられており、よく整備されていて、結構広いので、天気の悪い日に休憩するにはとても良い。小屋の中には、以前は外にあった祠が置かれている。
 山頂は、小屋から少し上がった所にある。山頂には一等三角点があり、360度の展望が楽しめる。若狭の山々はもちろん琵琶湖周辺の山々、さらには条件が良ければ、白山も望める。下りはもと来た道を引き返すか、次項の山集落へ下るかであるが、山集落へ下った場合交通機関としてはタクシーしかない。山集落から歩いて野坂いこいの森に戻るとすれば、車道歩きを1時間30分は覚悟する必要がある。
■コースタイム
 JR粟野駅→40分(30分)→野坂いこいの森→30分(20分)→栃ノ木地蔵→50分(40分)→一の岳→45分(35分)→野坂岳山頂
  (  )内は、逆コースのコースタイム

 

②山集落から野坂岳へ       ■対象:初級コース
 このコースは、気持ちの良い尾根道、美しい林の中の静かな登山が楽しめる。
   (2018.10.03現在、送電線の張り替え工事のため、第4鉄塔まで、工事用のモノレールが設置されている)
 敦賀市内から山集落へは色々な道があるので道路地図で調べてほしい。山集落に入り、酒屋さんの所で、左に入る橋を渡らず、黒河川沿いに直進する。最初の道を右折し、すぐに左手にある橋を渡る。しばらくは人家があるが、すぐに林道となる。しばらく林道を進むと広場のような所に出て、左手前方に小屋がある。車の場合この広場に止めることができる。7~8台位は充分に駐車できる。なお、山集落から歩くと約20分の道のりである。
 広場からは、前方に見える鉄でできた小さな橋(2013.11.24現在、この橋は壊れている/2018.10.03現在、少し上流に、工事用と思われる仮橋が架かっている)を渡り、左手に沢音を聞きながら杉林の中の沢沿いの道を進む。約10分で右手に送電線鉄塔の巡視路に行く道と二つに分かれるが、そのまま直進する。ここは間違いやすいので要注意である。その後、一度沢を渡り(ここには、2018.10.03現在、工事用と思われる仮橋が架かっている)、沢と沢の間の道を進む。しばらくで、道は左手の沢に寄ってきて、また、右に送電線巡視路が現れる。今度は、右の巡視路に入るが、直進する路もあるので、注意してほしい。
 右手の小さな沢沿いに登って行くと、道は急に右手の方に登って行く。ジグザグの急な登りを続けると、最初の送電線鉄塔の横に出る。送電線を上に見ながら尾根上を進むと、2番目の鉄塔に出会う。以前は、第2鉄塔付近のみが、このコース中唯一展望のきく所であったが、現在は、伐採されて、第1鉄塔より上では、敦賀市内方面の展望が得られる。
 しばらくなだらかな登りを続けると、途中から急な登りとなり、3番目の鉄塔となる。またしばらく緩やかな登りを続けると、4つに分かれたブナの古木に出会い、そこからは急登となる。やがて道は大きな尾根と合流する。この尾根を左に曲がれば、三国山へと続く市町境界の稜線であるが、野坂岳へは、ここを右折する。すぐに4番目の鉄塔の下に着く。
 急な登りを続けると、やがて797m付近で主尾根に合流し、道は右に曲がる。下山の際には直進しないように気を付けたい所である。この先はブナなどの広葉樹の気持ちの良い尾根歩きとなる。急な登りを登りきると、樹林の背が低くなり、道もやや細くなるが、すぐに山頂に着く。(三国山への稜線の分岐点まで/最終踏査2018.10.03)

■コースタイム
 山集落→20分(20分)→駐車場→40分(30分)→最初の鉄塔→50分(40分)→4番目の鉄塔→50分(40分)→山頂
  (  )内は、逆コースのコースタイム

 

③井ノ口林道から野坂岳へ(参考記録)   ■対象:上級コース
 JR小浜線で粟野駅を下車、駅を出て西に向かい、すぐにガードレールをくぐる。そこを左に行けば「野坂いこいの森」に行くが、真っ直ぐに進む。整備された林道を1時間30分で終点に着く。車の場合、林道終点に広場があり、7~8台は充分に止めることができる。この辺りは静寂そのもので、井ノ口川のせせらぎが心地良い。
 登り口は林道を詰めた正面から入るが、標識はない。5分も歩くと左に折れて沢沿いの道となる。沢に下りる手前に左の尾根から登る道があるが、廃道になっているので間違わないように注意が必要である。川を右に左にと渡りながら慎重に道を見極める。足元にも十分注意をしよう。45分で二俣に着く。ここが最後の水場となる。
 この地点から先が分かり難い。山頂方面から井ノ口川が流れており、これに南側からの小川が交わる。この右側の小川を20m程登ると左側に道がある。山道を確かめつつゆっくり登ると、滝の音が聞こえてくる。三保の滝であるが滝は見えない。この辺りで分からなくなったら前方の尾根に道が続いているので、南東方向に尾根の頂を目指すと良い。まばらに杉が植林された道を進むこと30分、海が見えてくる。山頂も間近に望める。さらにジグザグの登りを20分で尾根に出る。
 この尾根を東に行くのだが、道は杉の植林帯と自然林との境界線に続いているから、分からなくなったらこのことを思い出すと良い。杉林と灌木との間のか細い道を行くが、見通しは良くない。以前はしっかりした山道であったのに、杉の植林と後の手入れ不足で道が不明瞭になっている。山の肩あたりで道は全く消失しており、ヤブコギとなる。山の肩を右に回り込むように進んで行くと猪のヌタ場があり、さらに回り込んで行くと小さな池がある。池の向こう側に最近整備された黒河川からの道があり、その道を左に登ればすぐ山頂に着くが、道が見つからなければ山頂に向かって、ひたすらヤブコギするしかない。大した距離ではないが、やたらとイバラが多く、藪こぎの醍醐味を楽しまさせられる。
 山頂は360度の展望で、好天なら西は青葉山、東は遠く白山連峰、南には琵琶湖が見渡せる。

■コースタイム(参考記録)
 粟野駅→90分→井ノ口林道終点→45分→二俣→30分→海が見える地点→20分→尾根→40分→山頂

 

④野坂岳から三国山へ(参考記録)    ■対象:上級コース
 (2018.10.3現在の状況(芦谷山まで):以前より灌木や下草が繁茂し、歩き難くなっている。また、台風による倒木があり、迂回を余儀なくされる場所もあり。この区間を縦走される方は、下記の参考コースタイムより、余裕を持って計画された方が良い。)
 野坂岳の南に延びる稜線は、三国山に続いている。かっては、この稜線は、藪に覆われ、残雪期のみに許されるコースであったが、最近では少し刈り込みもされており、大変歩きやすくなっている。晩秋などの、下草が消え、木々の葉が落ちた時期には、途中の美しいブナ林を見ながら、快適な尾根歩きが楽しめる。ただし、途中、わかり難い所もあるので、赤テープなどを参考に慎重に行動する必要はある。
 野坂岳からは、②の山集落からのコース案内を参照されたい。約40分で、山集落から登ってくる登山道との合流点に着く。なお、野坂岳を越えてくると、かなり時間がかかるので、このコースを簡単に歩くためには、山集落からのコースを利用し、野坂岳山頂は、パスした方が良いかもしれない。
 いよいよ、この合流点から三国山への長い稜線歩きが始まる。この付近は、背の低い笹の上に、気持ちの良い林が広がっている。平坦な尾根を歩いていくと、潅木となり、両側からの木が少し煩い。小さなコブをいくつか越えると、正面に芦谷山、右手に庄部谷山が見える。稜線には、いろいろなテープが付けられており、コースがわかり難くなった時は、参考にすると良い。小さなピークを越え、下っていくと、左右にきれいなブナ林が広がり、芦谷山への鞍部に着く。ここからは急な登りとなり、登りの途中で振り返れば、野坂岳の雄姿が見える。道は、イワウチワの群生する細い尾根となり、小ピークを越え、下るとブナ林の広がるきれいな鞍部に着く。幅広い尾根を登ると、急斜面となり、次のピークに着く。ここには、左手からはっきりとした尾根が合流しており、逆コースから来た場合は、迷いやすい地点である。テープに従って、まっすぐに急斜面を下る必要がある。ここから少し下り、潅木の中をゆっくりと登ると、大きなブナの木が現れ、後ろに、木々の間から野坂岳が見えるようになると、芦谷山(866m)に着く。山頂には、木のプレートが付けられている。
 芦谷山からは、いくつかのコブを越える。初めは少し藪っぽいが、やがてブナ林となり、大きな木も混じるようになる。やがて、左手が二重稜線となっているピークに着き、ここからゆっくり右手に曲がっていく。低い笹の生える広い尾根を下って行くと、右手の庄部谷山へ続く尾根との分岐点に着く。ここは広場のような所であり、大きなブナの木が多い。庄部谷山への尾根は、ブナの並木道のようである。
 分岐からは、小さな笹の尾根をゆっくり下っていく。この辺りも、大きなブナの木が多く、気持ち良い所である。しばらくで、右に曲がる地点に来るが、ここは、要注意である。真っ直ぐ行きやすいので、注意してほしい。テープがたくさん付けられているので、それに従って右に曲がるが、この辺りも木が生え込んできて、わかり難いので、テープに従って進んでほしい。すぐにきれいな林となり、なだらかな下りの尾根となる。この後、突然、掘れた古道に出会い、下りが急になると、右手に沢の源頭が現れ、鞍部に着く。ここで、左手に杉の植林が現れるが、この植林は、三国山への登りの鞍部まで続く。植林のため、左は鬱陶しいが、これからは、植林との境界を歩けば間違いない。沢の源頭部からひとつピークを越えると、下りは急になり、三国山への登りの最低鞍部に着く。なお、鞍部からは、右手の沢を下っていくと、折戸谷林道の終点に、30分程で出られるので、エスケープルートに利用すると良い。その際、そのまま沢沿いに下るのではなく、15分程下った所で、沢から離れ、左手に回り込んでいった方が良い。
鞍部からは、三国山への急斜面に圧倒されるが、斜面には、ジグザグに、古道のような道が続いており、急な尾根を登り続けると、最初の送電線鉄塔に、約40分で着く。
また、送電線鉄塔から三国山へは、稜線上の道が続いており、この部分は、三国山・赤坂山のコース紹介のうち、④折戸谷林道から三国山(参考記録)を参照されたい。

■コースタイム(参考記録)
 野坂岳→40分→山集落からの登山道合流→60分→葦谷山→30分→庄部谷山への分岐→60分→最低鞍部→40分→最初の送電線鉄塔→40分→三国山
(注)逆コースは、30分程余計にみておいた方が良い。 (芦谷山まで、最終踏査2018.10.3)

地図