若狭の山と峠 09 杉尾坂

 小浜湾へ注ぐ主要河川の一つである南川を抱く名田庄谷は、京都への道である。丹波国である山向こうへ越す峠は全て都への道であり、牛馬を追って、また背に荷を付けて越えた交易のルートである。
 若丹国境の八ヶ峰と、若狭・近江・丹波の境にある三国岳(峠)の間には、五波峠、権蔵坂、杉尾坂、野田畑峠、地蔵峠、三国峠と昔日の往還をしのばせる古径が多くあったが、自動車の普及と共に、旅人は途絶え、村人達の足も山から遠のいた。生い茂ってくる草木と植林で昔の道は、消失してしまった所も多く、この杉尾坂もその例外ではない。
 古い峠道が消失してしまった今、杉尾坂を通って峠を目指す価値はあまりない。特に登山道は、急な作業道で、植林の杉に遮られて、視界も良くない。あえて利用するとすれば、杉尾坂を起点として京大演習林の散策を楽しむための福井県側からのアプローチと思っておいた方が良いだろう。
 杉尾坂へは、名田庄村の虫谷から入るのでこのルートを紹介する。なお、このルートの道は、現在植林の手入れのための作業道なので、今後ともこの状態で維持されるかどうかは分からない。なお、この作業道を横切って、時折、昔の峠道が現れるので、その道を探索するのは面白いかもしれない。


コース紹介

①虫谷から杉尾坂へ    ■対象:上級コース
 小浜から車で国道162号線を南下し、名田庄・久坂の手前で、左手の橋を渡り虫鹿野集落へ向かう。虫鹿野集落で道は橋を渡るが、その手前の板谷商店の所を右折し、虫谷川側へ入る。
 虫鹿野より約3㎞で虫谷の集落を通過し、ここで道の舗装は切れる。さらに1㎞で、林道が左に分岐するので、入らないように注意してほしい。この辺りから先は、林道が荒れてくる。状況によっては、もう少し先まで車で入れるかもしれないが、無理をせず、分岐手前の空き地に駐車することにする。
 この辺りの沢は明るく、川床もきれいなので夏の水浴びには良さそうである。駐車地点からさらに1㎞程進むと、堰堤が二つ続く所に出る。この先は、沢に入るか、そのまま林道をさらに進み、三俣の地点に下りるかになる。沢沿いのコースが荒れているので、林道をそのまま進んだ方が簡単かもしてないが、まずは、沢沿いのコースを紹介する。
 堰堤の所から沢に入る。はっきりとした道はないので、沢沿いを左へ右へと渡りながら、歩きやすい所を進む。明るい谷であり、さほど苦にならない。沢に入ってすぐ、左手から水量のある沢が合流するが、ここは直進する。この辺りは転石に苔が生え、周りのたたずまいが深山の趣を添えてくれる。ただし、苔のため滑りやすいので、注意が必要である。
 堰堤から約20分で三俣に着き、ここから尾根に取り付くことになる。ただし、三俣といっても実際は二俣と思っておいた方が良く、従って、堰堤から2番目の二俣である。なお、右側の沢は、すぐ上流でまた二俣となっており、地図上では三俣のようになっている。また、この地点は沢沿いに歩いていると、そのまま左側の沢に入ってしまいやすいので、気を付けてほしい。この地点には、大きなトチノキがあり、右手には飯場跡のような所がある。
 一方、堰堤からさらに林道を進んだ場合、さらに500m程先で、林道が大きく右に曲がる地点がある。ここを、左手に沢に下ると、三俣に出る。林道から下る地点には、標識を付けている。
 さて、この分岐からは、二つの沢に挟まれた尾根に取り付くが、一旦右の沢に10m程入り、左手の尾根に取り付くと良い。植林の手入れのためと思われる作業道が尾根上に付いていて、始めから急登となるが、道はわかりやすい。調査山行時は、良く刈り込みもされていた。ただし、道は急で、これが昔の峠道とはとても思えない。左手を見ると、それらしい道の跡が見つかるが、木が被さっていて、歩きにくいので、尾根上の作業道を行った方が歩きやすい。尾根上は、右が杉の植林帯、左が広葉樹の自然林である。昔の峠道は、右左に尾根を横切りながら続いていたと思われるが、右の植林帯では道の跡形もなく、左側にそれらしい所が残るのみである。
 尾根に取り付いて30分程登ると、道はなだらかになる。右が切れていて、右方面の尾根が見え、全体の様子が分かってくる。そこから15分程で、大木が2本立っている所に出る。峠越えで休憩をとった所かなと想像していると、昔の風景が甦ってくるようである。
 さらに5分も進むと、熊笹に覆われた平らな所に出るが、この辺りは左側が急斜面となっている。平らな所を過ぎると、再び道は急になり、急登を5分程続けると、稜線に出る。尾根の取り付きからここまで、1時間程の道のりである。峠は、ここを右に曲がり、50m程行った所であるが、下山時に登って来た尾根を間違えないように、稜線に出た所にテープ等の目印を付けておいた方が良い。
 峠に出ると、杉尾峠の看板があり、これまで登って来た細い道とは別世界の太く立派な道が付いている。この道は、京大芦生演習林の中の道で、長次郎谷作業小屋を経て、地蔵峠に繋がっている。標識によれば、地蔵峠まで、1時間10分の道のりである。地蔵峠から杉尾峠間は、京阪神からのツアーも行われているハイキングコースであり、シーズンには多くの人が訪れている。
 この辺りの林は、とてもきれいなので、時間の許す限り周辺の散策を楽しんでほしい。帰りは元来た道を引き返そう。稜線に出た所を、間違いなく左の尾根に入れれば、後は迷う所はない。

■コースタイム
 虫谷林道途中(駐車)→40分(30分)→最後の堰堤→20分(20分)→三俣→60分(45分)→杉尾峠

地図